院長挨拶

病院外観

 

 当院の病床数は300床で、その内訳はがんを中心とした呼吸器疾患が60床、結核30床、神経難病145床、緩和ケア25床、地域包括ケア40床となっています。これらの病棟でどのような診療を行っているのか、その主な内容をご紹介したいと思います。

 当院は沖縄県の肺がん診療の拠点として、豊富な経験と実績を有しています。県内各地から多くの患者さんをご紹介していただき、最先端の診断・治療を心がけています。最近の肺がん治療の進歩は目覚ましく、がんの遺伝子検査を行い、変異している遺伝子に合わせて治療薬を選択するようになっています。このような個別化医療を当院でも積極的に行っています。このような治療法の選択は一人の医師が行うのではなく、治療に関与する内科、外科、放射線科、病理などすべての専門医と看護師、薬剤師、放射線技師、理学療法士などのコメディカルが一堂に会してキャンサーボード(検討会)を開催し、治療方針を決定しています。肺がん診療の全過程を通して、安心して療養できる環境づくりを推進しています。

 特にがん治療においては、20234月に高精度放射線治療装置「TrueBeam」を導入し、迅速で最適な放射線治療の提供が可能になりました。これはがんの根治治療に用いるだけでなく、がんの転移による痛みの治療などにも効果が期待できます。一般に放射線治療は外来診療で行われることがほとんどです。当院では遠方から受診される患者さんを想定し、一般病棟または緩和ケア病棟での入院治療も行っています。

 当院は難病診療連携拠点施設になっていて、県内で唯一の筋ジストロフィー病棟があり、神経筋疾患に幅広く対応しています。さらに、認知症・パーキンソン病をはじめとする脳神経内科疾患の診断と治療にも積極的に関与しています。これらの疾患において、MRI、核医学、脳波、神経超音波検査、筋電図などの検査を駆使し、精度の高い診断を行っています。治療に関しても最新の薬物、例えば免疫性神経疾患である多発性硬化症や視神経脊髄炎に対しては、疾患修飾治療薬や分子標的治療薬を導入しています。また、これまで治療法が無かった脊髄性筋萎縮症に対しては、遺伝子を導入する核酸医薬品を用いた特異的治療や血漿交換療法など、日本でも最先端の治療を行っています。

 COVID-19 拡大時にコロナ病棟へ転用していた地域包括ケア病棟を、202310月より再開棟しました。地域の医療機関や施設と連携を取りながら、急性期治療が終わってもすぐに自宅や施設へ戻ることができない方々を受け入れています。当院の地域包括ケア病棟では、抗癌剤の治療やリハビリテーションも可能です。現在、病棟に余裕がありますので、当院でお役に立てることがありましたらどうぞ地域連携室までおたずねください。

 これらの特徴をもった当院ですが、2024年辰年のシンボル「竜」にちなんだ言葉を引用します。「三級浪高魚化龍(三級浪(さんきゅうなみ)(たか)くして(うお)(りゅう)と(か)す)」(『碧巌録』より)。中国の(か)王朝(おうちょう)を開いた(う)が、黄河の氾濫を防ぐために上流の竜門山に三段の滝「竜門三級」を造ったとされ、「この三段の滝を登り切った(うお)は、天に昇って龍となる」という言い伝えからきています。のちに科挙の試験場の正門を竜門と呼び、転じて難関を突破する関門を「登竜門」と表現するようになりました。

 患者さまとともに目の前に立ちはだかる壁にも挑戦し続け、それを超えることができたら新たな展開が待っていると、期待をもって職員一同2024年度も取り組んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

2024年4月

院長 大湾勤子